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4.Waiting for...
「七海もあったかいお茶飲むでしょ?」
それぞれの湯呑を用意しながら、父が私に尋ねた。
「外寒かったでしょ?何で会場まで行ったの?」
「……んー……。別にぃ?じじばば集まり行っちゃったし、ヒマだったから?」
「ははっ、ヒマだったからか」
父の笑う横顔とその笑い声は、年齢のわりにずいぶんと若い。
「言えば会場入れたのに」
「七海は“出待ちのマリー”を保護しに来てくれたんだもんねー」
電気ケトルのお湯がしゅんしゅんと沸くのをご機嫌に聞きながら、母が私に頷きかける。
出待ちという行為は、許されたものじゃないかもしれない。
ストーカー行為に発展するかもしれないし、それに抵触する迷惑行為もザラだからだ。
まぁ、父のようなアマチュア相手なら大丈夫というか分母が少ない場合はむしろ出待ちウェルカムな人もいるかもしれないのでなんとも言えないけど。
ステージを観た後の高揚感を抱えたまま、ほぼプライベートなその人を見るのはどんな心地がするのだろう。
時にはギャップにがっかりすることもあるかもしれないし、高揚感そのままに熱を帯びた視線を注ぎ続けることもあるだろう。
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