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「そっかぁ、淋しいからここまで来ちゃったのね」
「は?違うし。迎えにきたんだよ」
目をうるるんと潤ませて頭を撫でんばかりの勢いのこの人に、私は顔をしかめる。
「あ、でも、一人の外出はダメよ。神奈川県では青少年保護育成条例違反になっちゃうわ。保護者同伴でも睨まれちゃうからね」
「それって夜の11時以降の話でしょ?それまでに連れ戻すつもりでいたし」
この人のいつものこんなノリに、じじばばも含め私たち家族は呆れつつも容認済みだ。
物心つく頃からのこんなサイクルに疑問を感じたことが無いわけではないが、別に不便はないし、淋しくもないし、おばあちゃんの作るご飯は美味しいので嫌だと感じたことはない。
ただ、唯一疑問に感じるとしたら──。
「それよりお母さん──」
「あ、外ではお母さんじゃなくてマリーって呼んで。世界観が損なわれちゃうから」
「心の中では散々“真理子”って呼んでたけど」
「かーっ呼び捨て!かーっ本名!かーっ生意気!」
「はいはい、ごめんねマリー」
ロリータ風の金髪ロン毛を振り乱し地団駄を踏む母さん──いや、真理子──いや、マリーを、私はよしよしとなだめた。
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