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高いヒールを鳴らしながら銀柳街のアーケードを我が物顔で闊歩するマリーは、私の手を引いている。
いつまでも子供扱いしないでほしいのに、やはり繁華街の夜道を一人で歩かせるのが心配なのだろう。
「あ、ドンキ寄っていい?香水と服買いたい。あと良さげなウィッグでもあれば」
「先ほどの青少年保護育成条例の話は何だったのか」
「大丈夫大丈夫。あなた大人っぽいし、しーってやれば」
そう言って、人差し指を口元に立てるマリー。
これじゃあどっちが保護者だかわからない。
「あんまり帰り遅いとお父さん先に帰ってきちゃうんじゃない?」
「いーのいーの。お父さんには連絡しとけば大丈夫だから。今頃車の中だろうし、2国が混んでればお父さんより先に帰って来れるかも」
「……買い物がすぐに済めばね……」
呆れて返すのにも動じず、スマホのライン画面を開いていじりだす。
この人はいつもそうだ。
どこかふわふわしていてマイペースで、いい年した大人なのにちょっと心配になる。
いつまでも若い気持ちでいてくれるのは、娘としてはまぁ嬉しいけど。
だからこうして、毎回とはいわずとも時々迎えにきてしまうのだ。
私はふと、通りかかったパーキングエリアに目を向けながら声を潜めて尋ねた。
「……てかさ、外での“お父さん”呼びはいいの?世界観変わっちゃわないの?」
「あーこういう場合はいいの。使い分けってヤツ?」
そう笑って、親指をグッと立てるマリー。
それはなんか、古いしババ臭い。
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