第1話

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第1話

 お隣のお兄さんからは、いつだってさくらんぼのにおいがした。  字で書くなら、『匂い』とうよりも『臭い』。鼻につくというよりかは、こびりつくようなそれ。  そんなにおいについて、お兄さんは言う。仕方ないんだよ、と。 「これは呪いなんだよ、さくらんぼのね」  そう言って、さくらんぼの茎のように細い目を、さらに細めて笑うのだった。
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