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Gray sky
ーーもういい。
お決まりの言葉に、お決まりのその、眉をしかめたその顔に。
私の初恋は、イルミネーションの輝きに包まれてゆく。ぼうぜんと見送って、何か喋る言葉も、涙も、全部忘れてしまうようだった。精一杯お洒落して来て、ちょっとだけ露出して来た足が寒い。手をつなぐ為に外した手袋を握る手が、そのまま悴んで動かなくなってしまう。ヒールが高めのブーツを辛うじてで動かした私は、本来向かうべきだった方向から目を逸らした。私の横を通りすがってゆく恋人達は、楽しそうに笑い声をあげながら、ピタリとくっついて歩いている。私もその幸せな二人になるはずだった。イルミネーションが一番綺麗に見える公園で、手を繋いで歩くはずーーだったのに。
まだ付き合い始めて一年も経っていない、つまり初めて迎える二人のクリスマスイブ。神様は残酷で、一回ばかりもその時間を与えてくれなかった。クリスマスはキリストを祝うお祭り。それなのに、神様は残酷。一体どういう事?
明日のお天気予報は曇りです。午後には雪が降るでしょうーーーー
昨日の夜見た天気予報が頭をよぎった瞬間、灰色の空からひとつ、氷のかけらが私の鼻に付いた。
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