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それが合図となるように、さらに氷の小さな粒がはらはらと降り始めた。私は鞄から折り畳み傘を取り出して、広げて差す。周りの人々も同じように傘を差してーーあるいは相合傘をしてのけてーー冷たい冷たい雪から守ろうとしていた。
「ねえねえ」
隣から、いいや斜め下位の所から、無垢な声が私に掛けられた。涙を懸命に堪えていたものだから、びくっと驚いて、弾みに一筋だけ涙が出てしまった。急いでぬぐいながら隣を見ると、何もいない。「下、下!」と言われてそのまま視界を下に下げると、そこにはにんまりと微笑んだ少女が立っていた。淡いピンク色のセーターに、白く、花のブローチが付いているマフラー…たいそう愛されていそうな可愛い女の子だ。でも、少し寒そうーーー鼻の先が赤い。今はそれどころじゃないほど、私の心は沈んでいたけれど、相手は子供なのだから、私は笑顔で「なぁに?」としゃがんで笑いかけた。
「お姉さん、泣いているの?」
女の子は、珍しい真っ白な長い髪を揺らして首を傾げた。このような子供にわざわざ嘘をついたりする必要もないので、「ちょっとね」とまぁ少しばかり弱っちい大人を見せてしまう。でも、私だって振られたばかりなんだからいいじゃない、少し甘えたってーー…そうとも、思えた。
「悲しいの?」
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