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少女が再び笑ってくれたので、安心して息をつき、また心配になる。どこかへ遊びに…? この子は家族と会いたくないの? どうして? いかにも愛されていそうな、幸せそうな女の子なのに……。
…いや、私が勝手に、そう決めつけているのかもしれない。
「…いいよ、遊ぼうか。でも、三十分だけね、遊んだらお母さん探そ?」
どうせやることもない。三十分だけでも、綺麗な女の子と、素敵なクリスマスイブを過ごせるのならーー。私にとっていい思い出になるだろう。この子のとってもそうなればいいのだけれど。
「うん! ありがとう! お姉さん、名前は?」
「…私は胡桃くるみ。あなたは?」
「あたしはえな! 胡桃さん…いい名前ね!」
「えなちゃんこそ。胡桃でいいよ」
「あたしも! えなでいいよ!」
えなと名乗ったクリスマスの妖精は、両手を広げてくるくると回り、可憐な舞を披露してくれた。短い時間で、こんなにもすぐ仲良くなれるなんてーーー。今までこんな経験がない私は、目の前にいる少女がとても特別な存在に見えた。
「行こっ!」
えなの小さな手を握ると、信じられないほどの冷たさに驚く。私は手袋をし直していたけれど、えなは手袋をしていなかった。反射的に、ぎゅっと握ると、えなは可笑しそうにけたけたと喉を鳴らして笑った。元々、少し朱色に染まっていた?が赤になる。釣られて笑って、私達は周りと同じ方向に進んでいった。
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