第一話 モブキャラ喪女その名は薔子

3/8
前へ
/150ページ
次へ
 ーーー 2018年12月初めーーー  人気の少ない公園に、その制服から高校生と推測される男女が向かい合っている。砂場とブランコがあり、周りには桜の木がぐるりと囲むように植えられている。木の下に、二メートルほど間を開けて木製のベンチが三つほど置かれていた。入口から一番遠いベンチの近くに二人はいた。 「あのさ……」  男子は微かに頬を茜色に染め、言いにくそうに女子を見下ろしながら口を開く。どうやらまだここに来たばかりのようだ。黒髪短髪、背は高めでよく日焼けした、精悍なスポーツマンタイプでなかなかのイケメンだ。白地に黒とグレーのグレンチェック柄のパンツに黒のブレザー、紺色のコートを羽織っている。黒の学生鞄を左脇に抱え、黒のローファーを履いていた。  女子は男子のパンツと同じ模様の膝丈プリーツスカートに紺色のハイソックス、そこが異なるだけで後は男子と同じである。 「はい」  男子と裏腹に、女子は冷静に応じた。身長は平均的、やや痩せ気味のようだ。首のあたりで揃えられたボブヘアー、逆三角形の顔立ち。だが、顔立ちはちょうど影になっていて見えない。どうやら眼鏡をかけているようだ。 「その……えっと……」  男子は言葉を続けた。女子はただ黙って彼の言葉を待つ。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加