第一話 モブキャラ喪女その名は薔子

5/8
前へ
/150ページ
次へ
(もう慣れたもんだわ)  薔子は公園を後にしながら思う。平日放課後、午後の陽の光が漸く彼女の全貌を露わにした。  髪の色はダークブラウン。ショートボブで髪質はストレートだ。それは手入れでそうなっているというより、一本一本が針金のように太くて硬いので真っすぐにならざるを得ないらしい。唇は大きさは平均的だがやや厚ぼったい感じだ。鼻は高くもなく低くもなく、言い方を変えたら可もなく不可もなし、という感じだ。鼻筋の中心部分に少し雀斑(そばかす)が目立つ。髪と同じ色の眉はやはり濃く、凛々しい。しかし、真っ直ぐに切りそろえられた前髪で眉の半分は隠されている。肌の色はやや濃い目の象牙色で、17歳という若さのわりには乾燥気味のようだ。  細目の黒縁眼鏡は、目の下の部分はレンズがむき出しになっているタイプだ。どうやら近視と乱視が混じっているようである。その瞳は茶色でやたら二重瞼が厚くくっきりとしており、丸みを帯びた大きな目だ。睫毛もまた、濃くてバッチリと沢山生えており、あまりに濃くて下向きに生えそろっている。なまじ長い為に、普通なら可愛らしく見えそうな瞳も、目の下に隈を作り野暮ったく見せてしまう。加えて眼鏡姿がまた、なんとも彼女を地味で真面目過ぎな部分と、全体的に垢抜けない印象を決定づけている。    前述した通り、見目麗しく華やかな家族に囲まれ、以前は随分と神を恨んだものである。それはまた後程述べる事にしよう。今となっては、彼女は既に自分の人生はモブキャラ喪女で終わるのだと諦めていた。しかし、秘かに自負している事があった。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加