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私はその建物に入れない。ここまで来たけど、自動ドアの前から少し離れたところで立ち竦むだけだった。
一時間ほどそうしていただろうか、何人もの人が中に入って行くのをただぼんやりと見ていた。
と、数枚のピンクの花びらが瞳を遮るように舞い落ちてきてハッと我に返った。
本当にこれが現実なの?
涙が出そうになるのをこらえて、辺りを見回した。
私が立っている入り口広場を取り囲むように桜の木が植えられ、辺り一面にピンクの花びらが舞っていた。
私は桜の下の片隅に置かれたコンクリートのベンチを見つけると、ゆっくり座った。濃紺のセーラー服のスカート越しにヒヤリとした感触が伝わってくる。
そして、現実を確かめるようにリュックからスマホを取り出し、SNSの記録をスクロールした。
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