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ウザさ最高潮のアブラゼミの鳴き声が消えドロドロに暑かった夏もようやく過ぎて、鈴虫のりーんりーんという音楽会に季節は変わっていった。
悠花の病状は毎日更新されているように確実に進行している。頭の中によく消える消しゴムがあるように、悠花の記憶は日を追うごとに薄く掠れて見えなくなってゆく。
それでも子供がいると聞いた時、心が締め付けられるように痛んだ。この痛みは何だろう?悠花にはまだ子供の記憶の断片が愛しい自分の命を分け与えた存在として、残っていた。
けれどそれが何になると言うのだろうか?今の悠花には母親の役目すら出来ないというのに。それでも子供達からすれば悠花は唯一ママと呼ぶ存在でありそれは他の誰にも取って代わる事など出来はしない。
そう、母親とは子供にとってかけがえのないものであるが、今の悠花の病気を理解するには、子供達はまだ幼すぎた。
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