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人は、辛い事や悲しい事を忘れることで生きて行く生き物であり、また、楽しかった事や嬉しい事は忘れずに大切に覚えているもので、対称になるのは記憶の大切さではないか。 覚えている事が大切なことは、多分多かれ少なかれ誰もがあるのではないのだろうか。 それがある日を境にだんだんハッキリしなくなる。ご飯をいつ食べたのか思い出せない。 この人誰だったのかが、どうしても思い出せない、そんな事がそのうち日常茶飯事になってしまう。 そうこうしているうちに、今日が何月何日なのかも分からなくなってゆく。何をしようとしていたのかも分からぬまま燃え尽きる。 記憶の欠片はどんどん砕け散って、跡形も残らなくなってしまう。 自分の、今は覚えている事が、次の瞬間には消えてなくなる。そんな事を考えると本当に怖い。帰る家や待ってる家族の事も忘れてしまう、自分という人間を形容していた記憶の全てが水泡に帰す。 その病名は、アルツハイマー症。
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