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「へ~、確かに白竜学園の物だねぇ。判子も学園長が持ち歩いてる金印で押したっぽいし。このカロン先生が保証しましょう、この手帳は本物です。」
その言葉を聞いた瞬間、俺の緊張は一気にほぐれた。
謎の樹海をさ迷い歩き、その先にたどり着いた泉で蒼い髪の少女に吹っ飛ばされ、やっとたどりついたゴシック様式のファンシーなお城が正式な目的地だったと、たった今決定されたからだ。
白竜学園……変な所も多々あるが、ここであっていた。
俺は間違ってはいなかった。
ここは俺の存在を認めていているのだから、俺はここに居てもいいのだ。
そんな思いが、俺の冷えきった内臓を一瞬にして暖めた。
安心したら腹が減ってきたな。
なんて、急に余裕が出てきた俺だった。
が、……
「しかしだね……」
なんでしょうか、カロン先生。
不吉な接続詞を使うのは止めて下さいよ。
その生徒手帳は本物なのでしょう。
ならなんの問題もありませんよね?
「そう、この“生徒”手帳なのだが……」
「………」
ゴクリ、
生唾を飲み下したのは誰ですか。
俺ですか。
そうですかそうですか。
「これは“生徒”手帳ではなく“先生”手帳だよ。坂巻トマル先生……?」
そうですかそうですか……
って、
「な、なに~!!!」
蒼い髪の少女の形相も驚愕に変わっていたが、そんな事には気付かないほど焦った俺がいた。
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