転校生って、どんだけ肩身狭いんですか!!

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蒼髪の天使が右手を振り上げる。 眩い光弾が三つ目の狼に炸裂して、狼はまるで砂のオブジェのように崩れ去った。 蒼髪の天使が少年の傷だらけの体を優しく抱えて、背中に生えた真っ蒼白な翼で冷えきった樹海の空気を根こそぎ圧縮する。 三つ目の狼のリーダーが、卑しい三つ目で恨めしそうに天使を睨んだ。 ……オボエテロ……ゼッタイニコロス…… 呪いの言葉を吐かれたが、気にしない。 だってそんなの関係ないから。 ギュッと塊った空気が、純蒼白の羽根達の一枚一枚から、一斉に放出される。 「クルクシャロア・クラーテッ!!」 ドパァァンッ!! そんな、水面から飛び出したような快活な音をたてながら、蒼髪天使と血だらけ少年は無事、空中へと脱出を果たした。 わざわざ少年の意識が無いのを確認してから、血だらけの体を愛しそうに抱き直したように見えたのは、まぁ世に言うところの“都合の良い解釈”と言ったところであろうか。 蒼髪天使は血だらけの少年を抱えながら、なるべくゆっくりと飛んでいる。 夜の宙は、存外広いものなのです。
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