あなたは僕に死ねとおっしゃるのか。

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「所で、坂巻君。割りと重要なお話だから心して聞きたまえ~。」 朝食を食べ終わった俺は、カロン先生のいつになく真剣な口調を感じ取って茶をすする手を一旦止めた。 「何でしょうか。カロン先生?」 カロン先生は一呼吸置いてからおずおずと語り出す。 「坂巻君。キミは大変無知なんだ。まずそれを理解したまえ。よろしいかな?常識と言うものを一旦忘れてボクの話をよく聞くんだよ。」 「……はい、」 常識を忘れる。 三つ目の狼の事か、それとも俺が出会った天使の事か、それとも…… 「ご覧の通り、キミが一昨日の夜三つ目の狼から受けたとてもクリティカルなダメージは、ほぼ完治した。言ってる意味、分かるね?」 「……はい…」 本来、人間があんなに獣に噛みつかれたら、1日や2日で意識など戻る訳がない。 完治なぞ論外である。 さらに初日に明日香にぶっ飛ばされた事や、この奇妙とも言える広大な白竜学園のどこを見てもソレは事実として確認出来る。 つまり、 「常識ではあり得ないようなチカラ、すなわち魔法というものが、ここには確かに存在しているんだよ。おーけぃ?」 「はい、まぁ、身を持って体験しましたからね、その“魔法”ってのを。傷も、カロン先生が魔法で治療して下さったんですか?」 「その通りぃ。大正解です。トマル君が受けたケガはボクの治癒魔法で一瞬消滅いたしましたですよ。しかしね、トマル君……」 「はい、」 「キミの右目。それはこの上なく重症だよ。その傷はボクには癒せない。なぜだか説明しだすと果てしなく長くなってしまうけれど、そうだな、そのケガは、ボクの“領分”ではないんだ。だから治せない。」 「はい。」 「だからね、トマル君。キミがもしこのファンタジーでアニメチックな白竜学園を去りたいと願ったとしてもだよ……」 「………」 俺の顔面の右半分には固くきつく包帯が幾重にも巻かれている。 それはただ治療の為に固定されているという訳ではない。 この目は、今、光を直視すると溶けてしまう。 あの三つ目の狼達がそうであったように、俺の右目は一生光を拝む事が出来なくなってしまうかもしれない。 「まずはその右目、自分で取り返してこなきゃあいけない。分かるね、ぼぅや?」
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