あなたは僕に死ねとおっしゃるのか。

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支度を終えた明日香とは正門前で落ち合った。 彼女はまさしく“和”な出で立ちで、当たり前のように袴を着用し、胴着を身につけて、頭には白い鉢巻きまで締めている。 このまま時代劇に出演しても全く違和感の無い装いだった。 あと、腰に備え付けられたドスが若干威圧的だった。 「さあ坂巻君、私の後についてきて。三つ目狼達は光を浴びると溶けてしまうから、日中は暗いところに潜んでいるわ。これから奴らの根城に踏み込むけど、とにかく私の傍から離れないように。三つ目狼は単体の力はさほど強くないから、私の風盾(ふうとん)の内側にまで侵入する力は無いわ。あと気をつけるのは契約解除の仕方だけど、これは単純だけど落ち着いてないと結構難しいわ。」 そう言って明日香はポケットから小瓶を取りだした。 中には無色透明な液体が並々と入っている。 「まず私がボス格の三つ目狼を捕らえるから、坂巻君がそいつの額にある眼にこの聖水を注げば契約解除成功よ。これ自体はただの水だけど、強力な契約解除魔法が封じ込められてるから、三つ目狼も無害で済むわ。殺しちゃえば簡単だけど、私もカロン先生もそれは嫌だったの。分かるでしょ?」 ……確かに、あいつらは生きるために手段を選ばず獲物である俺を仕留めようとしただけだし、非はこちらにもある。 無闇に命を奪ったりするといけないし、ちと手間がかかるけどそれは仕方が無いことだ。 「分かった。その作戦でお願いするよ。……海風さん。」 「……何?」 「俺なんかの為にここまでしてくれて、本当にありがとう。」 「ふふ、お礼はたんまりいただくんだからね。」 「外の世界ので良かったら、何でもご馳走するよ。」 「期待しとくわ。さぁ、行きましょう。」 海風さんは愉しげにそう言って、颯爽と歩き出した。 太陽がようやく完全にその姿を現したのも、同じタイミングだった。
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