あなたは僕に死ねとおっしゃるのか。

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どれ程時間が経ったのか。 いやそんな数字的な物量が重要なのではない。 実際の時間の長さがどうであれ、この時俺が洞窟の中に入ってから、俺の主観では長い長い時間が経過していた。 洞窟内部は本当に真っ暗だったが、明日香の持っていた光を発する石のおかげでなんとか前進出来た。 それよりなによりキツイのは、とにもかくにもこの狭くてごつごつといた火山岩の道を下り続けなければならない事だ。 少しでも力を抜けば落下しかねない程の急勾配をいなさなければならず、俺の握力はもはや限界を迎えようとしていた。 すると、突然道が平らになってきた。 もしかすると、ここが最下層なのか。 「やっと下まで着いたね。いやぁ、手がじんじんするよ。」 出来るだけ明るく装って明日香に話し掛ける。 「しっ、もう三つ目狼はすぐ近くにいるわ。奴らを刺激してはダメよ。」 怒られてしまった。 逆効果だった。 そうして俺達が更に奥へ奥へと突き進んでいくと、何だかどこからか何かを舐めるような音がしてきた。 ピチャッ、ピチャッ、ピチャッ、ピチャッ、ピチャッ…… 絶え間無く続くその音は、きっと水かなにかの垂れる音が反響して拡大された音なのだろうが、こんな恐ろしい洞窟の内部で聞くと本当に何かを舐めているようにしか聞こえず、正直かなり怖い。 「坂巻君……」 明日香が声を潜めて言った。 「どうにもおかしいわ。奴らは縄張り意識がかなり強いから、私達が侵入したことに気付けばすぐに襲ってくるはずなのに、どうにも静かすぎる。」 「別にいいじゃないか。その方が安全だし、昼間は寝てるんじゃないかな?あいつら夜行性だろう?」 「……そうだと良いんだけど……」 妙な不安に駆られながらも、俺達は洞窟の奥へと足を運んだ。 流石に俺も心配になってきた。 道を間違えたか、いや、明日香が持ってる魔法の巻物に、洞窟内部の地形がかなり鮮明に映し出されていたから、まさか道に迷ったなんて事はないだろう。 そして急に明日香は立ち止まった。 「そこの角を曲がれば洞窟の一番奥に到着だわ。」 「……分かった。」 俺達は無言で、と言うよりは息を潜めて、いつにもまして慎重に、その最後の角を曲がった。 ……ピチャッ、ピチャッ……
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