あなたは僕に死ねとおっしゃるのか。

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そう、まさに俺がその最後の角を曲がろうとした瞬間、不意に明日香が俺を突飛ばした。 「危ないっ!!!」 「なっ……!?」 そのままバランスを崩して、ごつごつとした岩肌にしたたか体をぶつけた。 「えっ?……海風…さん……?」 「動いちゃダメよ!!そこでじっとしてて!!」 俺は急な展開に全くついていけてないが、どうやら危機が迫っているらしい。 この時俺は、どうせ三つ目狼が襲って来たのだとしか考えていなかったし、海風さんが戦闘態勢に入っているのだから、俺が動きさえしなければすぐに片が付くだろうと高をくくっていた。 実際、それ以上の何かが起こっているなどとは、夢にも思わなかった。 真っ暗闇の洞窟内部には、明日香が風魔法を使っているらしい音だけがひたすら響いていた。 無風であるはずの洞窟に突風が巻き起こり、それと同時に何かを切断するような快音も響いている。 しかしもし明日香が三つ目狼と刃を交えているのだとして、魔法使いである明日香がたかだか獣に引けを取るのだろうか。 戦闘が長引くという事は、つまりは明日香が戦っている最中だという事で、それはつまり明日香が敵を仕留められてはいないと言うことだ。 明日香は苦戦しているのか……? 一応、高校生として平均的な体重を持つ俺を5メートル近くも吹き飛ばす威力の魔法を使う明日香が、三つ目狼ごときにここまで時間をかけなければならないのか。 いや、もしも相手が三つ目狼なのだとして、奴らは光が大の苦手なのだから、先程まで使っていた光る魔法石を使わないのは、明らかに変だ。 一体、何が起こっているのか。 もしや相手は三つ目狼ではないのか。 もっと強力な、獣などではなく、もっと高等で、もっと手強い、そんな凶悪な存在が、白竜学園に存在するとでも言うのだろうか。 いや、そんな……… そして聞こえた。 確かに聞こえた。 俺の耳にはっきりと届いた、ソイツの声を。 「……任務完了……」 続いて、 「待て!!!貴様は一体何者だ!!?」 「……またね……」 「卑怯者っ!!!」 ………… どうやら敵は去ってしまったようだった。 そしてソイツがいなくなると、三つ目狼達が岩影からぞろぞろと姿を現したのだった。
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