全部砕け散ればいいのに。

4/8
前へ
/92ページ
次へ
行きに比べて帰りはすんげぇ楽だった。 なぜって、俺は三つ目狼のボスに跨がっているし、明日香に至っては“飛んで”いるからね。 そりゃあ速いもんさ。 自動車並の速度は出ていたね、確実に。 そういう訳で、三つ目狼の為に日陰を縫うようにして城に向かって移動していた俺達は、ちょうど太陽が真上に登ったくらいの時間に城にたどり着いた。 『…オレはオマエの…ミギメに…カクレテルから…ナニかアッタら…ヨベ……。』 「わかった。」 因みに三つ目狼の名前を俺は知らないし、三つ目狼も俺の名前を知らない。 それはただ単に聞いていないからではなく、きちんとした理由がある。 お互いに名前を教え合うという事は、つまり正式な契約が成立してしまうということなのだ。 そうなれば、最早強力な契約解除が魔法封じ込められた聖水なんかでは、それを解除出来なくなってしまう。 つまり、もし俺が三つ目狼に名前を教えれば、俺の右目は一生元には戻らないと言うことだ。 「……行きましょう、坂巻君。」 「……うん。行こう。」 また、こういう形で名前を盗み聞きしても、契約は成立しないらしい。 あくまでもお互いの意識が明らかに合致した場合のみ、正式な契約となるのだ。 それに普通、三つ目狼は絶対に正式な契約なんかはしない。 仮契約で目を奪っておいてそれをネタにして獲物を誘き寄せて、集団でタコ殴りにするのだという。 なんとも恐ろしい話である。 そうして俺の右目に三つ目狼がすっかりと隠れてしまった時、俺達は歩き出した。 歪んだ城に向かって……
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加