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それにしても立派な校舎だ。
至るところでヨーロッパの美術館に飾られていてもおかしくないくらいの銅像やら石像やらが置かれていて、草花がそれらの芸術達と見事に調和して、個々の個性を融和して全体で一つの芸術として機能している。
銅像一体作るだけでも何百万とかかるだろうに、ただの学園にしては尋常でない金と手間のかけ方である。
そして何より生い茂る木々の巨大さに驚くばかりだ。
これなんか、樹齢何千年くらいなんだろうか?
幹を輪切りにしてテーブルを作ったら、軽く20人は一緒に飯が食える事だろう。
そうやって俺が感心しながら道なりに歩いていると、不意に目の前に泉が出現した。
道は泉を迂回するようにして続いており、こんなに泉の近くに道を作ったら、きっと雨が降ったら水没してしまう事だろう。
泉を右手に見ながら俺は考えた。
ここは果たして本当に学校なのだろうか。
もしかすると、大富豪の私有地に勝手に足を踏み入れてしまったのではないだろうか。
不法侵入?
ドーベルマンが襲ってきやしないか?
捕まったりするのか、俺!?
「ちょっと、」
「ひぃっ、ご、ごめんなさい。学校だと思ってうっかり入っちゃって……!」
いきなり声をかけられた俺は、びっくりして謝ってしまった。
だって、急に右側から声がしたら驚くだろう、普通。
ん?
右側から声がした?
右側は、泉では?
「見てないでしょうね。」
「……は?」
俺が右に振り向くと、そこには真っ蒼な長い髪の毛に水滴を滴らせてバスタオルで体を包んだ少女が、処女雪のように純白で透明な頬を淡い桃色に染めながら、水の上に立っていた。
「だから見たの!?」
彼女の言葉に反応して水面に波紋が広がる。
怒っているのかもしれない。
しかし、慣れない場所を一人で心細く歩き回っていた俺は極度にテンパっていたため、何を「見た」のか知らないが、思わず謝罪してしまっていた。
「え、ええと、すいませんでした!」
俺がそう言った瞬間、少女の顔は朱を通り越して真っ赤に染まり、危険信号のように眉がつり上がった。
「セルボロア・クラーテ!!!!!」
ブハッッ!!
彼女が何事かを叫んだ瞬間、水が、しぶきが、俺の体を激しく塗らしながら、俺の体を激しくぶっ飛ばした。
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