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う、うう、頭が痛い。
一体、何が起きたんだ……?
確か、俺は飛んで、落ちて、痛くて、それで…それで…
『そう、それでお前は死んだんだ。』
!!?
真っ暗闇の真ん中で、どこかで誰かが呟いた……
「ば、ばかな!!俺は死んだのか!?」
闇は冷えきった漆喰のように凍てついて、俺の手足を蝕んでいく…
『そうだ、もうここは地獄だ。』
どこかの誰かが哀しそうに繋げる。
「なっ!だって、たかだか五メートルかそこら飛ばされただけなんだぞ!そんなに簡単に人は死なないよ!!」
『………』
「お、おい…なんとか言えよ!!」
『……打ち所が悪かった……』
俺は思わずがっくりと膝をつき、冷たくて粘りけのある、闇そのモノに触れた。
「は、はは……そ、そんな事…」
『……お前の母上も、そのような死に様だった……』
どこかの誰かはひたひたとこちらに近づいて来る。
どうやら裸足のようだ…
「母さんを知っているのか!?」
どこかの誰かは俺の耳元で囁く。
その吐息はひたすら冷酷で、そしてなぜか懐かしい響きだった。
『……ふっ、愚問だな……』
「……え?」
誰かは少し、笑ったような気がした。
『俺は嘘をついた。お前はまだ死んでない。』
「……なっ?」
『ほら、もう行け。ここにいたら本当に死ぬぞ。』
誰かはしきりに俺の背中を押して、無理矢理歩かせた。
なんだか急に辺りが明るくなってきたようだ。
『おい、坂巻トマル……』
俺は悟った。
こいつは俺の命を奪おうとしていた死神だったんだ。
危うく魂を盗まれるところだった。
俺の体から冷や汗が吹き出し、胃がきりきりと痛む。
でも、こいつが死神であるならば、なぜ……
『………』
誰かは一瞬悩んでからこう言った。
『もう来るなよ。』
なぜあなたは俺を見逃してくれたんですか……?
「ありがとう。」
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俺はゆっくりと、瞼(まぶた)をこじ開けた。
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