熱帯夜に思わぬ再会

2/3
前へ
/22ページ
次へ
 0:00を少し回っているというのに気温も湿度も下がらない。太陽が照っていないのに気温と湿度をキープするなんて真夏の夜のパワーは極悪だ。  ベッドで眠ることを諦めてフローリングに転がってテレビをつけた。こんな時間の番組なんてたかが知れている。リモコンをピコ→NHK。ピコ→Eテレ。ピコ→MRT。ピコ→UMK。宮崎の地上波は民放が2局。ずっとこれで育ってきたから不自由はないし、今はBSだってある。  白井はこのテレビ環境に落ち込んでいた。番組のほとんどに『これはOO月に放映されたものです』というテロップが流れるから。2局で捌ける番組数はしれているから過日放送ばかりだ。  リアルタイムと過去の番組が同じタイミングで放映されることに白井はイライラしていた。ニュースでハリウッド俳優が帰国したことを知った同じ日、「なんと大物俳優OOが生出演!」のテロップをぶらさげた映画のプロモーション番組が放映されたりする。  白井は『気持ちの悪い時間軸だ。帰ったら浦島太郎だな』そう言っていた。ああ……なんだ。帰るつもりだったんだな。俺はてっきり盆や正月に帰省することだと思い込んでいた。もしかして俺が気付くように小出しにしていた?でも俺はそれを全部スルー……もう今更だけど。  UMKの番組は一面の銀世界で雪玉をぶつける集団の映像だった。画面の右隅には「YUKIGASSEN/昭和新山雪合戦世界大会」の文字。そして「これは2月に放映された番組です」のテロップ。  雪の玉をぶつける遊びと認識していたがどうやら世界大会規模になっているらしい。揃いのウエアとヘルメットにスポーツサングラス姿で対戦する選手達は真剣だ。暑い夜に雪を見て涼しくなってください的な番組チョイスだろうか。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加