熱帯夜に思わぬ再会

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 北海道……遠いな。直行便はないから乗り継ぎ。千歳までの往復で10万金(じゅうまんがね)が飛ぶ。LCCは夕方の便しかないから関空まで行けても千歳まで辿り着けない。LCC+大手の組み合わせは可能だけど僅かしか安くならないし、金曜の夕方に飛んでも自由になるのは土曜日の1日のみ。日曜はもう帰るだけで一日が終わる。  気まぐれに飛行機を調べてスケジュールを立てた時俺は現実を知った。「何とかなるは何とかならない」まさにそのとおり。遠恋を選んだって会うことすら難しい。金がかかる、そして時間が足りない。  白井は俺に言うべき材料を沢山持っていたのだろう。それを聞いてもたぶん俺は理解できなかった。「何とかなる」と呪文のように言い続けて困らせたに違いない。だからあんな突き放した言い方をしたんだろうな。なんだよ……じわりと滲む涙を手の甲でゴシゴシこする。1年近く泣いてばかりで情けない。 『同僚と観戦に来ました』  聞き慣れた声がテレビから流れた。画面には男女のグループがインタビューを受けている。マイクの前には白井。慌てて起き上がり画面を食い入るように観た。あまり変わっていない白井は真面目な顔をしながら質問に答えていた。 『やってみたいけど雪の少ない地域なんです。生徒とできたら楽しいでしょうね』  ああ、ちゃんと先生になれたんだな。新米教師の白井はモテているに違いない。生徒に手をだして人生を棒に振らないといいが。でも振ったら俺が拾いにいける!  「差し支えなければ教えていただけます?どちらの学校ですか?」との問いに白井は答えた――勤務先の学校名を。  俺は急いでスマホのメモに平仮名で打ち込む。続けて検索をかけるとあっさり学校は見つかった。そうか、お前はここに住んでいるのか。 町役場のホームページに始まり、白井タウンを巡る旅をしているうちに、熱帯夜のことも気持ちの悪い湿度のこともすっかり忘れてしまった。  やっぱり俺は白井が好きだよ。どうしたらいいのかわからないけど、俺はお前が好きだ!!
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