これにて終幕。恋の行方は?

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「転ぶ前に掴まれよ」  そう言われて白井の左腕にしがみ付いた。 「公衆の面前やぞ?」 「地元民が内地の友達を案内している姿にしかみえないよ」  白井はスリムなボトムに編み上げのブーツ。マフラーを巻いてダッフルコートを着ている。俺?ひざ下丈のベンチコートにスキー仕様の手袋とネックウォーマー、目が隠れるギリまで深々と裏起毛のニットキャップ装備。白井の言う様に地元の人はお洒落防寒スタイル。観光客は背に腹は代えられないダサイ完全防寒だからすぐわかる。  1年で一番寒い2月に開催される「雪まつり」に来た。冬になっても逃げださなかった俺に白井がくれたご褒美。  俺は宮崎から白井タウンに引っ越した。勤め先はスーパー。「北海道に憧れていました。地元の生活に根差した職場で働きたいです」という俺のセールストークが功を奏し店長はその場で採用を決めた。男を追いかけて来た事実を打ち明ける必要はない。  白井の家から坂を下り歩くこと5分の所が俺の家。白井は俺の休みの前日が何曜日でも泊りにきてメロメロのトロトロにしてくれる。白井の休日は大抵俺の所でゴロゴロしているから帰るのが楽しみだ。「おかえり」と言われる度に顔が緩む。  お盆が過ぎると秋がきて、10月になると宮崎では完全に真冬にカウントされる気温になった。俺の知らない本当の冬は最強で極悪。冷たい風が当たると勝手に涙がでる。そして痛い。寒い中歩いて温かい室内に入ると毛細血管が一気に拡張して全身がチリチリ痒くなる。 北国の人はチビッコから大人までツルツルのアイスバーン道路を平気で歩く。爺さん連中は自転車を操るテクニックを持っていた。郵便配達は冬でもバイクで配達(バイカーの俺でもこれは絶対無理)冷凍庫気温でも血は凍ることなく生きていられる。南国常識はことごとく潰された。  俺は白井が好きでたまらん状態だから寒さに耐えた。それに熱帯夜に見たテレビ番組が俺と白井を繋いでくれた。冬にはお礼しかないから頑張れる。
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