カキーン!熱の共有

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 俺は15分後に白井の隣に座り、親切な男を精一杯演じた。 「どっかに上着忘れてきたと?一緒に探しちゃっか?」 「上着は着ない。だって暖かいでしょ、充分」 「これであったけえ?充分さみっちゃけん」 「あ~俺、北海道民なんだ。今は宮崎住みだけど」  そう言われてみれば、イントネーションは全然違うし訛りもない。NHKのアナウンサーみたいだ。田中邦衛は嘘つきだったのか?あれはドラマのデフォルメか?  色が白い、腕毛が薄い。何度になったら寒いのか、暑いのはどこまで我慢できるのか。冷凍庫みたいなところに住んでいてなんで血が凍らないんだ。そんな俺の質問に半笑いで答える白井。酔いのおかげで防壁が緩んでいたのだろう。  樺太(北方領土らしい)出身の爺ちゃんがロシアとのクオーターだったことまで聞きだすことに成功した俺はその後も攻めまくった。連絡先をもぎ取り、その日は撤退。がっついてもいいことはない。  翌日から連日飲みに誘い、ドライブに連れ出した。毎日とにかく押しまくった。その甲斐あって白井は面倒くさくなったのか、観念したのか俺を受け入れてくれた。  そんなこんなで1年半。25歳社会人3年目だった俺が20歳の大学生に付きまとったんだから情けない話だ。しかしそれくらいしても手に入れたい、白井はそんな魅力を持っていた。
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