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彩香からしてみれば、どれも意識的にやっている事ではないらしい。
野本としては彩香が疲れている時に一緒に寝てくれる理由が分からなくて、心配したこともあった。
しかし彩香は、「疲れている時に無理に休もうとしても身体が強張って休めないんです。そういう時こそ純一さんの温もりが必要なんですよ」そう言って、逆に野本を喜ばせていた。
たまに人格が入れ替わったように見えるのも、『頭の回転がついていかない時はどう反応していいか分からなくて無表情になる』と、説明した。
言葉がうまく頭に入ってこないため、情報が処理できないのだと言う。
一緒に暮らしてみていろんな一面を知ったが、先日、東京にいた頃の上司である江原からもらった本を読んで思った通り、本当に大変な体質なのだと知った。
まだ両手で胸を押さえる彩香から無理やり視線を剥がすと、携帯の画面を確認する。
五十嵐からの着信だった。
彩香にチラッと視線を向けながら通話に切り替えた。
「もしもし」
『あ、休みの日にすみません。市内で事件があったんですけど、明日から捜査本部を立てるので直行の連絡です』
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