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「そうですか。ありがとうございます。詳しい事はメールで送ってもらってもいいですか?」
『了解です』
会話が一瞬途切れ、電話を切ろうとした瞬間。
『今回はちょっと厄介ですよ』
五十嵐の低く小さな声が聞こえた。
思わず顔をしかめた瞬間、冷静を取り戻した彩香と目が合う。
「どういう事ですか?」
彩香もまた、野本の表情を窺っていた。
『……警官殺しです。現場が荒れてるみたいで、覚悟が必要かもしれません』
「そうですか…分かりました。では、明日……」
電話を切った後、野本はソファの上で肩を落とした。
彩香は何も言わず、ただ黙って背もたれの向こうから野本の身体を抱きしめ、頭を撫でる。
まるで慰めているみたいに。
「警官殺しだから赦せないんじゃない…そう断言したいけど、きれいごとだね」
人々を守るために働いているつもりが、いつの間にか恨まれていたりもする。
いずれ自分の身にも降りかかるかもしれない不幸を思うと怖くなるし、仲間を殺されたことに憤りも感じる。
会った事も無い仲間だけれど……。
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