TABOO

12/16
516人が本棚に入れています
本棚に追加
/333ページ
――― 「被害者は中津(なかつ)明美(あけみ)46歳。中央署の交通課所属で、シングルマザー。高校2年の娘が一人います」 五十嵐が手帳を読み上げると、本田がいつものように腕を組み、パイプ椅子にもたれかかりながら目を閉じた。 「背後から鈍器で頭を殴られ、その後マフラーで首を絞められ窒息死してます」 「殺人である事は間違いないですね」 資料に目を通しながら野本が言うと、すぐ隣に座っていた緒方が机の上で指をバタつかせながら音を立て始めた。 「問題はこっちじゃない?被害者の所持品」 その言葉に全員の目が緒方に向けられる。 「今井(いまい)千裕(ちひろ)豊畑(とよはた)香美(こうみ)魚住(うおずみ)茉莉(まつり)秋吉(あきよし)志紀(しき)小林(こばやし)(ひとみ)、計5名。これらの殺人事件のスクラップファイルを持ち歩いていた事…こっちの方が重要かと思いますが」 「確かにな。交通課じゃ殺人事件は扱わんし、個人的に調べていたのかもしれないな」 珍しく緒方の意見にまともに返答した本田だったが、口を開くだけで態勢を変える様子はない。
/333ページ

最初のコメントを投稿しよう!