いつのまに

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「今日に限ってって?どういう意味?」 腰に巻き付いていた腕が離れると、緋浦は窓際で腕を組み、五十嵐を見た。 しかし、その質問に答えたくない五十嵐は目を合わせようとしない。 「ああ。今日は彩ちゃんがあの男の家に引っ越す日だからねぇ」 こんなところで意地の悪さを発揮するからこの二人の関係は進展しないのだ…と、いう事に緋浦は気付いていない。 「知ってて言うんだからサイテーだよな、お前」 「なによ。慰めようと思ってんのに」 「嘘つけよ。楽しんでんだろ?」 「違うわよ。今日…なんだったら…飲み、付き合うわよ?」 思わぬ誘いに五十嵐は唖然とした。 「は?」 「だから…一人で食事するよりマシでしょ?愚痴くらい聞いてやるし。私だって…彩ちゃん取られて悔しいもの」 頬を赤く染めながらふてくされる顔に思わず見とれてしまったが、目が合うと慌てて顔を伏せた。 確かに…見た目は美人なのだ。 口を開かなければ。
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