いつのまに

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『五十嵐くんはまだ気づいてないだけだよ。すぐに私への気持ちなんて忘れちゃうから、大丈夫』 あの日…彩香にフラれた日。 彩香はそう言った。 まだ、失恋から立ち直れてもいないし、彩香の事を好きな気持ちは変わらない。 だからこそ仕事に打ち込んで、できるだけ思い出さないようにしてきた。 だけど、ふとした瞬間に思い出す。 思い出すのがいい思い出ならいい。 でも、いつも思い出すのは彩香の泣き顔だった。 告白して、迫って、困らせてばかりいたから、これは罪悪感だろうか……。 食欲もわかないし、疲労感は常にあるから気にもならない。 無我夢中で働いているうちに、こんなに痩せてしまって、自分の事を嫌っていると思っていた緋浦に心配させた。 でも…あの反応はどう見たって嫌ってる人間の反応ではない。 こうなると、自分の視野の狭さに呆れてしまう。 それに、自分がここまで鈍いとも思っていなかったのだ。
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