いつのまに

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「きっかけって?」 五十嵐が緒方の顔を覗き込むと、緒方は眉間にしわを寄せた。 「犯人にとって大切な何かを失ったとか…はっきりとしたものではないんですけど」 「それをきっかけに一度は治まった殺人衝動がよみがえるって事ですか?」 「おそらく。どちらにせよ、この犯人は海外のシリアルキラーについてよく知っています。もしかしたら犯罪者に関わる仕事をしているか、海外への留学経験があるなど、海外の犯罪事情に詳しい人物だと思われます」 そうなるとまだまだ人が死ぬ可能性がある。 しかも海外のシリアルキラーの殺害方法に乗っ取って。 被害者は犯人と面識がないかもしれないし、無差別に殺害している可能性も出てきてしまう。 「厄介な事件だな……」 本田がそうつぶやきながら背伸びをすると、チラッと壁掛け時計に目を向けた。 「とりあえず今日はもう解散だ。明日、五十嵐と野本は鑑識に行って現場から発見された所持品について聞いてこい。緒方は引き続き犯人のプロファイルに当たれ。以上」 それだけ言い残した本田は椅子から立ち上がり、会議室から颯爽と出て行った。 「被害者の人間性だけ見てみると、犯人が無差別に狙っている気もしないんだけど」 緒方がぼそっとつぶやいた言葉に、五十嵐と野本は視線を向けたが、言葉を掛けることはしなかった。
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