偽物

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偽物

数時間後、署内は一気ににぎやかになった。 10人近い男たちが連行されてくると、彩香はその様子を見て身を縮めた。 何人かは逮捕されたことに不満を覚え、大声を張り上げて壁や机を蹴り歩いている。 しかし、先頭を行く男は無言で、俯くことも悪態をつくこともしなかった。 背後から近付いてきた野本が彩香の肩にそっと触れた。 その気配に気づいていなかった彩香は大げさに身を縮ませ、胸を押さえる。 無理やり声を押し止めたから、むせてしまった。
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