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―――
「コーヒー淹れようか?」
久しぶりの休日。
野本がキッチンから顔を覗かせて訊いた。
「私が淹れますよ?」
立ち上がった彩香がキッチンに入ろうとすると、なぜか抱きしめられる。
「ダメ。DVD見るんでしょ?用意しといて」
そう言って頭を撫でられると、何も言えなくなってしまう。
「……分かりました」
しぶしぶそう答えた後、リビングに戻ろうとして野本を振り返る。
「おいしいコーヒー淹れてね」
思いがけない彩香の言動に、野本は口元を手で隠して笑った。
一緒に暮らし始めてからというもの、随分と彩香の態度は変わった。
野本が甘えるからかもしれないが、彩香も存分に甘えて来るし、口調も少し変わった気がする。
野本自身、敬語を使わなくなったのが彩香にも影響しているのだろうか。
心のどこかで抱いていた五十嵐に対する敵対心が、少しずつ薄れている。
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