TABOO

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お湯が沸いた音がして、野本はコーヒーを淹れ、リビングに向かう。 「純一さん、本当に見るんですか?休みの日まで私に付き合って刑事もの見なくてもいいんですよ?」 「じゃあ…何見る?恋愛もの?見るより体験した方がいいと思うけど」 テーブルの上にコーヒーを置いた野本がソファに腰掛けると、隣に座っていた彩香がまじまじと顔を見てきた。 「体験?」 微笑みながら訊いてくる。 こんなんじゃ、DVDを見るどころじゃない。 「このシリーズを見終わるまで、“体験”はお預けかな?」 自分自身に言い聞かせるようにそう言ってみたが……。 「え?そうなんですか?だってこれ…今出てるだけでシーズン13まで出てますよ?」 その言葉に野本は固まった。 「今のは撤回。でも…見るから。彩香が見たいものを俺も見たいから」 慌てた様子の野本を見て、彩香はまた笑う。 そして、こてんと小さな頭を肩に寄せてくるから、野本も肩に腕を回して抱き寄せた。 彩香の髪を撫でながら、もう片方の手でリモコンの再生ボタンを押すと、新作予告が流れる。
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