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どのくらいそうしていただろうか。
身体中を取り巻いていた風が、少し柔らかくなったような気がして、俺は恐る恐る顔を上げた。
フードの下からそっと覗くと、まだ風は吹いているものの、視界はかなりクリアになっていた。
「落ち着いたか」
俺は内ポケットをまさぐると、スマホを取り出した。
「圏外……」
唯一の命綱が、いとも簡単に切断されてしまった。
こんな時、文明の利器など何の役にも立たない。
途方に暮れて辺りを見回すと、前方に薄っすらと建物が見えた。
レストランかも知れない。
俺は急いでそこへ向かった。
スキーもストックも、何処かへ行ってしまったようだ。
きっともう見付からないだろう。
ニット帽も加えるとかなりの出費だが、仕方がない。来年また新調しよう。
そんな事を考えていると、ようやく建物の全容が明らかになってきた。
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