雪山の記憶

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六畳程の小屋の中は、陽の光が殆ど届かず、半分が闇に包まれていた。 長年使われていないのか、隅の方に農機具らしき物が固まって置いてある他は、何も無い。 期待を大きく裏切られた俺は、がっくり項垂れると、その場に座り込んでしまった。 「あのぉ……」 何処からともなく届いてきたか細い声に、飛び上がらんばかりに驚いた俺は、キョロキョロ辺りを見回した。 「すみません」 衣擦れの音と共に闇の中から現れたのは、若い女だった。小上がりに、ちょこんと腰掛けている。
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