雪山の記憶

9/19
前へ
/19ページ
次へ
「ああ……。びっくりした。ずっといました?」 「ええ。そこに」 女の指差す方を見ると、そこは、光の届かない闇の中だった。 「スキーをしていたら、ホワイトアウトに巻き込まれてしまって……。寒いので、隅の方で丸くなっていました」 「そっか。俺と一緒だ」 奇遇だね、と言いながら小上がりに腰掛けると、ふふっと微かに笑い声が聞こえた。 「ごめんなさい。不謹慎ですよね」 慌てて口を塞ぐと、女は上目遣いに俺を見上げた。 暗くてよくわからないが、年の頃は二十歳前後だろうか? なんとなく、可愛らしい感じのする女だ。 俺の中の男の部分が、少しだけ、首をもたげた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加