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雨上がりの世界
空を埋め尽くす灰色の雲の隙間から、一筋の光が差し込んだ。黄金色に輝くそれは細い筋となって、雨上がりの大地へと静かに舞い降りる。
一本、また一本と雲から漏れ出る光が増えていくにつれて、冷え切った地上は緩やかに温かな色味を取り戻していく。
空が明るくなる頃には、町にもわずかながら活気が戻り始めた。簡素な衣服に身を包んだ町人たちが、眩い日差しに誘われて古びた家屋から次々と姿を現す。
大きく伸びをする者もいれば、慌ただしく駆け回る者もいる。町人たちは、各々の形で数日ぶりの陽光を浴びた。
かつては豊かな自然に囲まれていたこの場所も、今では当時の面影を完全に失ってしまった。人々は崩れかけた家屋の中に身を寄せ合い、その日その日をどうにか生き延びている。
町の各所では、赤褐色の錆に覆われた鉄くずや機械が山のように積み上がっていた。雨水をたっぷり吸い込んだ地面が、町人たちの素足によってぐちゃぐちゃにかき回されていく。
世界がこのような姿になったのは、一年半前のことだ。
何の前触れもなく発生した毒素が大地を冒し、多くの人間を死に追いやった。毒素は触れたものをガラス質に変化させることから、 硝毒という呼び名が付いた。
硝毒はゆっくりと、しかし確実に世界を蝕んでいった。生き残った人々は特殊な装置を用いてバリアを張り、硝毒の影響を受けない安全地帯を作ってその中に閉じこもった。
安全地帯の外が残らず汚染されたのは、それから半年後のことだった。
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