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「こんなんで本当に客が来るんだろうか」
福田は半信半疑……いや、三信七疑くらいの気持ちで看板を外に出し、看板に付いているコードをコンセントにつなぐ。時計の針は開店時刻の11時をもうすぐ回ろうとしていた。
開店してしばらくすると1人の男性客が入ってきた。今まで顔を見たことのない客だ。福田はナポリタンの注文を受け、パスタを茹でながらソースを温め始めた。
ナポリタンを客に出し終わるとドアのベルが再び鳴った。今度は2人組の若い女性客だ。今度のオーダーはオムライス。福田はオーダーを受けると速やかにフライパンに火をかけ、チキンライスを作り始めた。
2人組の客にオムライスを出し終わった頃にはまた新たな客が入ってきた。そして先ほどのナポリタンの客がレジの前に立つ。福田が代金を受け取った瞬間、
「あのさ、ひとつ聞きたいんだけどさ」
客にそう尋ねられた。
「はい。何でしょう?」
「店の看板、間違ってるよ」
客は店の外を指差しながらそう言った。
「あ、そうですか。すみません」
福田は笑いながら頭を下げる。
「ま、でもナポリタン美味かった。また来るよ」
男はそう言って店を去って行った。
ーーまさか、あの看板がこんな効果を生むとは!
福田は男の背中を目で追いながらそう心の中でつぶやいた。そう言う間にも窓の外には看板を見て立ち止まる客がちらほらと見えている。
時計はあっという間に針を進め、気がついたら午後1時になっていた。こんなに目まぐるしいランチタイムは初めてだった。その後も客足は途絶えず、終始ホットコーヒーの香りが店内を漂っていた。
「言った通り……いや、想像以上の結果だっただろ?」
午後4時。カウンターに座っている常連客がそう福田に話しかけると、
「はい。まさか看板を変えるだけでこうなるとは思いもしませんでした」
福田は感心した表情でそう答えた。
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