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光る君を待つ
数ならで なにはのことも かひなきに
などみをつくし 思ひそめけむ
――あなたにとって数にも入らない身分で何もかも諦めていたのにどうして身を尽くしてお慕い申し上げるようになってしまったのでしょう。
「源氏物語」で明石の君が詠んだこの歌に私は幾度となく自分の境遇を重ね合わせた。
身分が違う。私のような者など相手にしないだろう。
それでも明石の君は私に言わせればよほど「マシ」だ。光る君に想いを打ち明け一緒に時を過ごせたのだから。
私はと言えば二度と会える見込みのない”光る君”を今も待っている。
そして、私が本当に自分の人生を重ね合わせたいのは「明石の君」じゃない。今も昔も「紫の上」だ。
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