葵side

2/5
前へ
/14ページ
次へ
この前までは明るかった空も、冬の気配と共に暗くなってきていた12月の初め。 自転車置き場の近くの自販機の下を必死に覗き込む少女が一人。 ………どこ落ちたんだろ。 上村葵は自転車の鍵を探していた、携帯の懐中電灯機能で辺りを照らすも見当たらない。 葵の場合、家は自転車で20分程の距離にあるため、歩いて帰る事は出来るだけしたく無かった。よりによって今日財布を忘れるなんて、昨日は持ってたのに……電車で帰れないじゃん。 気付いたら空には星が瞬いていた。 ヤバい、泣きそう。 気持ちばかりの照明も人が居なければ恐怖を煽るだけだ。半泣きで鍵を探していると 「そこ………まだ誰かいるのか?」 「っっ!うきゃーーっ!?」 「うきゃーーっ…って俺はオバケかよ」 そんなのいきなり声をかけてくる方が悪い。ただでさえ照明でびびってたのに………………って 「先生?」 「おっ上村か?」 声の主は葵の担任だった。 いつも不機嫌そうな顔しててちょっと恐い。 「どうしたんだよ、こんな遅くまで」 「自転車の鍵、落としちゃって……」 自販機の下に目を向ける。 それに気付いたのか、そこを覗き込む。 「あー、分っかんねーなぁ……そういや上村、最寄り駅どこだ」 「三神ですけど」 「いくらだ?」 「はい?」 「こっからいくらかかるか、って聞いてんの」     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加