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この前までは明るかった空も、冬の気配と共に暗くなってきていた12月の初め。
自転車置き場の近くの自販機の下を必死に覗き込む少女が一人。
………どこ落ちたんだろ。
上村葵は自転車の鍵を探していた、携帯の懐中電灯機能で辺りを照らすも見当たらない。
葵の場合、家は自転車で20分程の距離にあるため、歩いて帰る事は出来るだけしたく無かった。よりによって今日財布を忘れるなんて、昨日は持ってたのに……電車で帰れないじゃん。
気付いたら空には星が瞬いていた。
ヤバい、泣きそう。
気持ちばかりの照明も人が居なければ恐怖を煽るだけだ。半泣きで鍵を探していると
「そこ………まだ誰かいるのか?」
「っっ!うきゃーーっ!?」
「うきゃーーっ…って俺はオバケかよ」
そんなのいきなり声をかけてくる方が悪い。ただでさえ照明でびびってたのに………………って
「先生?」
「おっ上村か?」
声の主は葵の担任だった。
いつも不機嫌そうな顔しててちょっと恐い。
「どうしたんだよ、こんな遅くまで」
「自転車の鍵、落としちゃって……」
自販機の下に目を向ける。
それに気付いたのか、そこを覗き込む。
「あー、分っかんねーなぁ……そういや上村、最寄り駅どこだ」
「三神ですけど」
「いくらだ?」
「はい?」
「こっからいくらかかるか、って聞いてんの」
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