葵side

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「…………わざわざ来なくても良かったのに。」 なんだか素直に喜ぶのはしゃくでぶっきらぼうに言葉をつむぐ。 「そら悪かったな。 明日お前が困るんじゃないかと思っただけだよ。」 決まり悪げに頭をかく、その手の甲に真新しい傷があった。 「先生、その手どうしたの?」 「あぁ鍵取る時にちょっとな、お前気を付けるんだぞ、自販機の底はボルトとかそのままで危ねーんだ。なんかあっても手で取ろうとするなよ。」 むかつくけど、先生が手に傷作ってまで鍵を取り出して自転車を持って来てくれたのは事実だ。 「ありがとう、先生。」 するりと素直な言葉が零れる。 「まぁそう言って貰えると頑張ったかいがあったよ。じゃあな。」 そう言うとそそくさと車に乗り込み帰ってゆく、私はそれをぽかーんとした顔で見送る事しか出来なかった。 だって…………………… あのいつも不機嫌そうな顔の先生が照れた様に、困った様に小さく笑ったから。 その顔が離れない。 どこにでもある様な小さな出来事、でもそれが、人の心を恋へと誘うには十分すぎる理由となる。 あなたもそんな経験あった事ない? 時は変わって2人が結ばれたその帰り道。 「ねぇ先生」     
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