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私は軽はずみに“不純”という言葉を出していたことに気付き、唇を押さえた。
浅見さんもピクリと眉を動かすと、ピンクのグロスの光る唇をすぼめている。
気に障ったかな?
「なによ。水野さんは不純な動機じゃないの?」
「え? 私ですか?」
浅見さんは頷いた。
含みのある言い方をされたけれど、私には不純な心当たりはまったくない。
「そうよ。配属が決まったとき部門の希望って一応聞いてもらえたでしょ? そこで生活雑貨を選んだのは、やっぱり桐谷係長がいたからよね? あんなにイケメンで有名だったんだから!」
「え? 違いますよ。私、希望はインテリア部門で出したんです。それが落ちちゃって、生活雑貨になったんですよ。雑貨も興味があったので、今では全然気にしてないですけどね」
「えぇ!?」
そんなに驚くことだろうか。
確かに部門を選ぶとき、生活雑貨部門にイケメン係長がいるという噂は聞いたことがあったけれど。
皆が皆、イケメン上司のいる部門に応募するわけではないと思う。
私は売り場でインテリアの売上を伸ばして表彰されたことがあったから、そのとき一番自信を持てる部門だと思ってインテリアを希望しただけで、実際その部門にイケメン上司がいるかどうかなんて気にもしていなかった。
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