ふたりきりの飲み会

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「すでにうちで売られているコーヒー器具は、どれもコーヒーを時間をかけて美味しく作るためのものです。ですが働く女性にはそんな時間はありません。それでも朝のちょっとした時間にコーヒーを楽しみたい。そんな人が手を伸ばしやすいように、最低限の機能と味は保ちつつ、その分スピードとデザイン性に注力して価格も思いきり落としました」 「でもネットではもっと安いコーヒー器具がいくらでも売られているでしょう?」 「物を買う決め手は安さだけではありません。コンパクトでもスローライフを実感できるデザインに注力します。このリフレシリーズは働く女性層に着実にファンを増やしています。中価格帯ですが、リフレシリーズというだけで新商品を楽しみにチェックしているファンが一定数います。そこに買う予定のなかった、ネットでもチェックしていなかったコーヒーメーカーが発売されたら、どうでしょうか。シリーズの特性とデザイン性を保っていれば、最安値でなくても売れるブランド力がこのシリーズにはあります!」 課長はうーん頷くと、部長にどうぞと質問を譲った。 毒舌で有名な部長の言葉を生唾を飲んで待つ。 「……シリーズの価値を上げるための新商品が、最初からシリーズのブランド力に頼ろうとするってのはナンセンスじゃないかな?」 「えっ」 「それに働く女性だからって、本当に朝コーヒーを入れる時間もないのかな?」 「それは、アンケートでは一応……」 するとその質問には課長が部長に「そんな時間ないです。部長みたいに皆優雅な朝じゃないんですから豆なんて挽いてられませんよ」とチクリと応えてくれた。
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