私のパトローナム

1/9
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

私のパトローナム

言葉がもつれて、口が、舌が、色んなことを一度に喋ろうとする。 一度に二つ以上の発音は出来ないのに、我先に飛び出ようとする。 音は出る。だが勿論聞き取れる様な言葉になっていない。 今でも後悔している。 でもそれ以外にどうすることが出来ただろうか・・・ 白という言葉を聞くと、今でも思い出す。 : 2018年6月、私のパトローナムは、長い闘病生活に終止符を打った。 パトローナムというのは、ハリーポッターの物語で出てくる、守護霊の魔法のことだ。 サッカー日本代表が、コロンビア代表を相手に歴史的勝利を納めた当日。 私の大事な家族は、呼吸困難で緊急入院した。 悪性リンパ腫(血液のガンだ)を発病してから、11ヶ月経っていた。 かかりつけのドクターは、私の問いに答えてすらくれなかった。 「この状況だと、あとどれくらいもつのですか?」 「はっきりとは言えません。」 「でもどちらかと言えば、悪性リンパ腫というのは、病気としては付き合いやすい病気です」 「薬で治療していくことで比較的苦しくない状況が続く穏やかに進行する病気です」 ・・・言っていることが本当なのか、どういう意味なのかは、後になって知ることになる。     
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!