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1、忘れえぬ面影
「あいつ、また別れたんだって」
あたかも世間話のついでのように、聡子が何気なく呟く。
それが彼のことを指しているのだと、気づいている。
けれど、あえて気づいていないフリをして「誰のこと?」と問い返す。
「やだな、賢のこと。─…でもそうか。あんた達、別れてもう5年だもんね。「誰?」ってなるよね」
よかった、聡子は気づいてない───ほっと胸を撫で下ろす。
5年。
もうそんなに経つのか、と過去に思いを馳せる。
「でもあいつも酷いよね。「運命の相手なんだ!」なんてロマンチックなこと言っていた割には、あっさり別れてまた別の女に乗り換えるんだもん」
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