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2、赤いルージュ
ゆるいウェーブのかかった、栗色のセミロング。
いつからだろう。
「あの人」に良く似た人を見かけても、怯えることがなくなったのは。
「彼、あんたみたいな地味な子より、あたしのほうがいいんですって」
ふと、耳の奥に蘇る声。
「だから彼のこと、貰っていくわね」
赤く塗られた唇から、まるで毒のように吐き出される言葉。
他にもたくさん、何か言われた気がする。
思い出そうとしても、ガサガサと砂嵐の向こうで喋っているようで、ハッキリと思い出せない。
それでいいのだ。ようやく「あの人」のことなんて忘れることが出来たのだから。
それよりも、日を追うごとに鮮明に思い出されるのは彼のこと。
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