2、赤いルージュ

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 先日、聡子から聞いたところによると、私と別れたあとの何人目かの女性と別れたのだそうだ。  正直またか、という気持ちだ。  けれど、彼が誰かと別れたという噂を聞くたびに、思うことがある。  彼もあの時の私と同じ気持ちになることはあるのだろうか、と。  5年前を思い出すと、ツキり、と胸が痛む。  そんな痛みを、彼も味わっているのだろうか。  今更別れた彼を思う。そこに愛情はないのだろう。 映画のシーンのように、思い出を投影した映像だけが、ただ流れていく。 私は無感情にそれを眺めるだけ。 彼を愛していたのかも、思い出せないほどに思い出は薄れていく。
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