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「真広…!」
『ああ、翔太』
「…悪かった…俺が、全部、間違ってた」
『もういいよ
…わかってるから』
「昨日…ホントに…ごめん」
電話の向こうの真広が笑っている。
『ははっ…騙して悪かったな…
お前の拳、なかなか重かったけど
…杏樹とお前が幸せになれるなら…本望だ』
「…っ」
『…もう、離すなよ』
真広の声が真剣になった。
『2年後。
もし、杏樹がまた泣いてたら、その時はーー』
「…離さない。もう、絶対」
真広の言いたいことがわかって、翔太も真剣に告げた。
フッと電話の向こうの真広が息を吐く。
『なら、いい。
翔太。
…杏樹とお前なら。
大丈夫だ』
「…ああ。
そうだな」
『お…。
また電話する!
あのことだけは杏樹には言うなよ。
もう行かなきゃならないから…じゃーな!』
「…っ…ありがとう…
ありがとう、真広。
絶対また、会おう」
『ん。何処にいたって、親友は変わらない。…じゃ』
電話が切れてーー泣きじゃくる杏樹を胸に優しく抱いて
翔太も一粒の涙を流した。
ーーーーー
「…杏樹」
「…」
ソファに座る2人。
「…俺はもう、杏樹を離さない。
離すつもりはないし、離れられない」
「…」
「杏樹は
ホントに、俺とでーーいい?」
少し緊張の伝わる、翔太の声に、
杏樹は頷く。
「翔太さん…
真広のことは好きです。
…愛しているのは、翔太さんだから…。
だから、一緒に…これからを、生きていきましょう。
2年後、真広がまた、『良かった』って言ってくれるように…」
「ああ。ああ、杏樹…
ありがとう…」
窓の外にはまたちらつき始める雪が
大地を優しく白く包み込むように
降っていた。
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