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翔太がベッドに座る杏樹の前に跪いた。
じっと目を見つめられて、杏樹は真っ赤だ。
「もう一度…はじめから…
俺と、結婚してくれますか」
杏樹は少し目を見開いて、それから細めると、泣きそうな顔で微笑んだ。
みるみる涙が視界を潤ませる。
「はい…
翔太…さん…
もう一度、
私と、結婚…してください…」
翔太は頷いて微笑むと、杏樹の指輪にキスを落とす。
「…ここから」
翔太と杏樹の視線が優しく絡み合う。
「ここから、始まる…
初めから…
これから、2人で…愛を…始めよう…」
「はい、翔太さん…」
杏樹は何度もうなずいて、愛しい人の胸に包まれて、涙を流した。
ーーーーー
「忘れ物はない?」
「はい」
杏樹はマンションの部屋の鍵を掛けた。
隣のドアを見つめる。
「…」
ーー年末だし…実家に帰ってるとか?
それとも…旅行に行ってるとか…?
杏樹は、あれからすぐ真広に報告しようと思っていたのに
電話は繋がらないし、部屋にもいないのだ。
翔太と話し合って、杏樹と翔太は、近いうちにあの家に帰ることになった。
また、2人で住むためにーー
今日は、ドライブがてら、翔太の『事務所』と、あの2人の家を見に行くのだ。
お正月明けに、芹澤所長にも引っ越しの話を相談して、仕事は続けるつもりでーー
心配顔の杏樹に、翔太は淋しそうに微笑んだ。
「真広が…気になるよね」
「あ…っいや……」
咄嗟に口をついて出た言葉をやめて、杏樹は素直に頷く。
「はい、そうです…
私、ホントにお世話になったし、迷惑かけたし、心配ばっかりかけて…」
「…うん。
俺も…
心配かけて、迷惑かけた…。
話したい事あるけど、あれから連絡が取れなくて…」
翔太は苦い顔をした。
「俺が夕べここに来たのは、真広のおかげなんだ。
だから、真広とは、ちゃんと、話したい。
ケジメをつける。
…杏樹の引っ越しは、それからにしよう」
杏樹は頷いた。
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